雪山登山の始め方
雪山に登ってみたいけど、どのように始めればいいの? ここでは私が普段ご案内している八ヶ岳やその周辺の山を中心に例を示します。
ステップ1 まずは体験から
まずは雪の山がどんなところか知ることから始めてみることをおすすめします。短時間でも雪の中を歩くことによって、雪の量はどれくらいなのか、どれくらいの寒さなのかなどいろいろなことが実感できます。
初めての雪の山に登るにあたって、どの山に登るかということですが、雪のない時期に登ったことのある山を選ぶとよいと思います。雪で景色はかわっていますが、途中で目印になるのがあったり、どのくらいのペースで歩けばよいかわかっているので安心感があります。
当クラブでは、霧ヶ峰や入笠山を雪山体験に向いた山として、雪山が初めての方におすすめしています。
■霧ヶ峰車山はコースタイムが短く、雪の山が初めての方でも安心して登ることができます。
また霧ヶ峰一帯はなだらかな地形になっているためスノーシューに向いています。短いコースから少し長めのコースまで楽しむことができます。
冬でも富士見パノラマスキー場のゴンドラを利用できるため、実際登る標高差はそれほどなく、短時間で山頂に立つことができます。雪山登山、スノーシューどちらも楽しめる場所です。
ステップ2 一度体験してみると・・・
一度体験してみると、雪の山に登るにはどんな服装をすればよいか、どのような装備が必要か、どんな技術を身につける必要があるのかということがイメージしやすいと思います。
「ステップ1」でわかったことと道具、技術の必要性
■雪の質、感じはどうなのか(ベタベタしているか、さらさらなのか)。
- 雪からの濡れに注意する → オーバーズボン、スパッツ、手袋など。
- 湿った深い雪の場合、疲れ具合が大きくなる → ラッセル技術
■登山道はどうなっているのか
- 踏み跡があるのかどうか → ルートファインディング力を身につける。わかん歩行。
- ズボっと埋まった → わかんが必要。わかんの使い方。
- 急な斜面や凍っている箇所 → アイゼンが必要、歩行技術。
- 滑落の危険性がある箇所は? → ピッケル、10本爪以上のアイゼン、歩行技術、ピッケルワーク
■寒さはどれぐらいか。
- 体が寒かった・登る時は暑かった → 服やレイヤリングの改善、こまめな体温調節、適切な歩行ペース、休憩の取り方
- 顔、頭、首すじが寒い → 帽子、目出し帽、ネックウォーマー
- 手が冷たい → グローブの改善(薄手のインナー、オーバーグローブをつけるなど)
- 足が冷たい → 靴下を暖かめのものにする、雪山用登山靴の検討
- 水が凍ってしまった → 保温用のボトルに暖かい飲み物をいれていく
- おにぎりが凍ってしまった → パンなど水分が少ないものにする
■風の強さは?
- 吹き飛ばされそうだった → 稜線上、山頂は風が強いことを認識。耐風姿勢。
- 冷たかった → 凍傷にならないような対策(目出し帽、手袋、アウターのフードをかぶる)
■降雪
- 雪が降っている中での行動 → アウターが必要なのか、カッパでも大丈夫か
- 激しい降雪で歩いてきた踏み後が消えてしまった → 読図の技術
- 吹雪で方向がわからない → 読図の技術
まだまだあると思いますが、一度の経験によりいろいろなことがわかってきます。
雪の山に登るには道具をいくつか揃えることになりますが、道具の役割や使い方を学んでから購入された方がよいものが選択できると思います(「手袋はもっと余裕があるサイズにすればよかった」など実際使ってみないとわからない点も多いのです)。
できれば最初の体験はそれほど環境が厳しくない山で最低限必要な装備でのぞみ、徐々に必要な装備を揃えていくのがいい方法だと思います。
当クラブではアイゼン、ストック、スノーシューなど数は多くはありませんがお貸しできるものもありますので、ぜひご利用ください。
また、将来的にはどんな山を目指したいなどお聞きし、それを踏まえた装備のアドバイスもできますので、ぜひご相談ください。
ステップ3 八ヶ岳に挑戦
八ヶ岳は2000mを超える山々が連なる山域で、冬はとてもきびしい環境となります。ただ北八ヶ岳ロープウェイを利用することで、初心者の方でも比較的登りやすくなります。
■北横岳
北横岳(標高2480m)はコースタイムも短く、最初に挑戦するにはよい山です。冬でも登山者が多い人気の山ですので、登山道もよく踏まれ登りやすくなっています。途中には北横岳ヒュッテもあるので安心して登ることができます。
■縞枯山・茶臼山
北横岳より少し長いコースとなります。縞枯山からいったん下って茶臼山に登るというようにアップダウンもあり変化が楽しめます。
■雨池
雨池まではスノーシューでのんびり歩くのがおすすめです。山頂からのような展望はありませんが、雪がたっぷりついた樹林帯を歩きながら動物の足跡を見つけたり、一面雪原となった雨池の景色もいいものです。
冬でも営業している縞枯山荘や北横岳ヒュッテで1泊すれば、上記の北横岳、縞枯山・茶臼山、雨池を組み合わせてまわることができ、冬の北八ヶ岳をじっくり楽しむことができます。
【注意】
北横岳や縞枯山、茶臼山は2300m~2500m、車山や入笠山は1900mを超えるぐらいの標高です。それほどかわらないと思われるかもしれませんが、雪の量、気温の低さ、風の強さなど八ヶ岳は一段ときびしい環境であることをご認識ください。